


すずの音がまだ町にひびいています。りくは金の鳥の背にしっかりつかまり、きんいろの光の中を高く高くのぼっていきました。風がほおを打ちます。りくはふえをぎゅっとにぎりしめ、青い空の遠くへ、大きく笑いました。
世界にただ一冊。ずっとあなたのもの。
Lumora の絵本
りくのための一冊
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光が川にとどきました。やねというやねのすずが、いっせいに鳴りました。ちりん、ちりん、ちりりん。町じゅうの音が、りくと金の鳥をむかえました。


門がひらくと、金の鳥は大きなつばさを広げました。あかいたかどのがいくつも並び、風にひかるすずの音が遠くから聞こえます。きんいろの光の帯をしっぽのようにひきながら、りくと金の鳥はたかどののあいだをかけぬけていきました。りくは背中にしっかりつかまり、光の中で目を細めました。


ばんにんは羽を大きく引きました。「その歌…空を呼びさます歌だな」ばんにんが言いました。氷の門がびしりと鳴り、まぶしいつぶになってくだけました。りくはふえをにぎりしめ、光のかけらの中に立っていました。


りくは大きく息を吸って、あのすずの歌をうたいました。りん、りん、りんりん。声は白い息になって、氷の門にぶつかります。金の鳥も首をそらし、すんだ声を重ねました。ふたつの歌が、雲の海をふるわせました。


そのとき、ひとつのすずが小さくゆれました。りくは目をこらしました。氷ではなく、風がそこだけ歌っています。「力じゃない」りくは言いました。「あれは、まいあさ聞いてる歌だ」


灰色のかべの切れ間から、りくは下をのぞきました。川ぞいの町は、まだねむったように暗いままです。やねの下にならぶすずも、白いしもをまとって動きません。りくは金の鳥の首にしがみつき、じっと町を見つめました。


金の鳥は大きく息をすい、きんいろのほのおをふきました。氷の門はその熱をすいこみます。りくの目の前で、門はさらに厚い灰色のきりのかべに変わりました。金の鳥の羽が、しずかにふるえています。


りくはきんいろのふえを口にあて、思いきりふきました。音は風をはらうどころか、すぐにこおりついてしまいます。ふえの音は小さな氷のつぶになり、キラキラと雲の底へ落ちていきました。りくはふえをにぎりしめたまま、じっと下を見つめました。


「朝の門が閉じたままでは、光は通さぬ」ばんにんが言いました。声は氷のように低くひびきます。冷たい風がりくのマントを大きくふくらませ、ほおをつきさしました。りくは金の鳥の背に手をついて、まっすぐばんにんを見あげました。


きりの中に、あかい門がうかびあがりました。門の前に、白いしもの羽をひろげた大きな鳥が立っています。りくが手をとめると、鳥はひとつ羽ばたきました。氷の風がまっすぐに飛んできました。


金の鳥は雲の海へ飛びこみました。まわりは白いもやばかりです。きんいろの光の帯もかすんで、細い線になってしまいました。りくは目をこらしましたが、どちらが上か、もうわかりませんでした。


りくは金の鳥の背中に飛び乗ります。羽は日なたのようにあたたかく、むねにほおをつけると心の音が聞こえました。そのとき山の上から白いきりがふき出し、空のたかどのへ続く道をふさいでしまいます。りくはふえをにぎりなおし、まっすぐ前を見つめました。


雲の上のふなつきばに、りくは立っています。空はまだむらさき色で、もやが足もとをおおっています。りくがきんいろのふえをくちびるに当てると、もやの向こうから大きな金の鳥がまいおりてきました。羽の音が、朝のしずけさをふるわせます。

りくへ
Lumora の絵本
りくのための一冊



