みおの手に、小馬のはさみがひんやりと重なりました。ばら色の海が、ふたりの足もとでちゃぷんと鳴ります。「手とはさみをつないで、しおだまりの王国をすすもう」、海草の森の入口へ、ふたりはゆっくりゆっくりすすみました。
世界にただ一冊。ずっとあなたのもの。
Lumora の絵本みおのための一冊lumora.kids
ひとつ、ふたつ、みおの小さな足が石をたしかめます。つめたい水しぶきがぴちゃんと跳ねて、最後の溝をぴょんと越えました。むこう岸に立って、みおの胸はとくとく、うれしく鳴りました。
波がすうっと引くと、とんとんの音がした岩から、平らな石がひとつ、またひとつと浮かびあがりました。みおは涙をぐいっと拭って、水たまりに映る顔にそっと言います。「待ってて、いま渡るよ!」
「あ、波をとめてくれてるんだ!」みおは気づきました。小馬はハサミで対岸の岩を、トン、トン、トンと三回、あの合図で叩いていました。
涙のむこうに、みおはそっと目をあげました。小馬は貝がらをさがしてはいません、流木みたいに大きな体を横たえて、つよい潮の道をふさいでいました。
「小馬、綺麗な貝殻を探しに、一人で行っちゃったんだ……」みおの目から、ぽろん、ぽろんと涙がこぼれます。冷たい水と悲しい気持ちで、足がじんと重くなって動けません。
みおははだしのまま、ぴょんと溝を跳びこえようとしました。ぬるぬるの海草に足がすべって、ドスンとしりもちをつきます。つめたいしぶきが顔にかかって、みおはそのまま動けなくなりました。
岩の隙間から、冷たい潮がどうっと流れこみました。ふたりのあいだに、川のような溝ができました。「小馬、待って!」みおは叫びますが、声は波の音にのまれて消えてしまいました。
向こう岸にきらり、桃色の貝がらが光りました。つないだはさみが、すっとほどけていきました。小馬はふり向かず、ずんずんと深みへ歩いていきます。
トントン、トントンと、はさみの音が水の上をわたっていきます。イソギンチャクの庭は、ゆらゆらり、みおの足首をくすぐりました。「手とはさみをつないで、しおだまりの王国をすすもう」、みおは小馬と歌いながら、そっとそっと進みます。
赤やオレンジのヒトデが、まあるい広場にぎゅうぎゅう集まっています。小馬は大きなハサミで岩を、トン、トン、トンと三回たたきました。「ここは渡れる、しるしだよ」と、みおはハサミの音でおぼえました。
潮だまりはきらきら、光るお城のようです。ポニーほど大きな真珠色のヤドカリ、小馬が、みおの手にはさみをちょんとのせました。二人は手とはさみをつないで、王国への一歩を踏み出しました。
みおへ
引き潮の潮だまりで、みおと大きなヤドカリの小馬は手とはさみをつないで夕暮れの王国を冒険します。
Lumora の絵本みおのための一冊